アタリしか引かない。

※全てフィクションです。エロと精神とらぶ。

一目惚れでしかない、でもそれは見た目じゃない。

ひとりでいる瞬間、不真面目に遊びたい衝動が起こらないわけじゃない。色を仕掛けて誘惑して、セックスはしてもしなくてもよくて、ただ退廃的で何にもならない、自己満足の時間を過ごすことが完全にいやになったわけじゃない。

例えば廃墟で男が持っていたはっぱを吸って、トリップしながら膝の上に乗り上げてからだじゅうに口付けて、興が乗った男に服を着たまま揺さぶられてオーガズムを得ることや、ベランダから海しか見えない孤立した別荘で失神するほど烈しく抱かれて目が覚めたら部屋が青く染まっていて、あまりにも青が濃くて朝だか夜だかわからないままたばこを吸っている男のところに甘えにいくことや、激しく言い争って音信不通になった男と再会して真夜中の路地裏で会わなかった分を埋めるように求めあってフェンスに乱暴に押し付けられて犯されることや、フェラーリでぶっ飛ばしてハイになってそのままカーセックスに縺れ込むことや、自暴自棄になった男を正しく突き放して、その後文字通り体を与えて慰めてわたしの上で泣き出してしまうのを見ることや、セックスすることに恐怖があって誰も抱けなくなっていた男がわたしと寝たことによって精神・性機能ともに恢復して信じられないくらい素直に貪欲に求めるようになるのを見ることや、緊縛されて嬲られて快楽に身を浸すことや、男を踏んづけて叩いていかせることなんかを愛していなかったわけじゃない。しょうもないことだとわかってはいるけれど、彼らとの時間があったから今わたしは生きている。しかしレイヤーが多い人生だね。

でももう全部やったの。もう全部知ってる。何が起こるのか見えるから、もうそれは退屈というジャンルに入る。これから何が起こるか完全に予測可能ならそれはもう手に入れたも同然で、手に入れた瞬間から終わりまで見通しがたつなら始める意味もない。始まる前から彼らはすでに死んでいる。わたしと離れたがるのはいつも男の方で、その後その人たちはみんな心身の健康を損なってる。どうせ死に至るのだから始めるのもかわいそうだろ。わたしはとてもやさしくなった。わたしのせいで入院になったみたいな話はもうたくさん。(このあたりに関しては厳密にいうとわたしのせいではないことが判明した)

ある人がわたしを一目見て気に入って、わたしがいつものように笑いかけたらその人はわたしのことを好きになる。わたしは絶世の美女ではない。ただの恋はそういう風にして起こるし、そういう風にしかならない。こんなこと書くと頭がおかしいと思われるだろうけど、実際そうなんだから仕方ない。わたしの友人にはわたしが一目惚れされるところを目撃した人が幾人かいる。そしてわたしと一緒に何かの店屋に入ると、一人のときよりも店員が親切に、丁寧に接してくれるのを体験しているはず。わたしは人に好かれる才能がある。

街中で目があった人が親しげにおしゃべりしにきてくれたり、外国から来ている女の子や男の子にやたらと助けを求められたり、何にもないのに電車で席を譲ってもらえたり、お年寄りに頼られたり、飲食店でサービスされるのが日常茶飯事だったり、立ち寄ったバーで閉店時間を過ぎて帰らないでくださいと懇願されたり、知らない人の傘に入れてもらえたり傘をもらえたり、きりがないな。外に出て嫌な思いをしたことがほぼ皆無でよいことが無数にあり、それらが編まれるようにしてわたしの生活は営まれてる。

これらは努力の結果じゃない。だって努力するのキライだもん。全部あの人のおかげで、これからもずっとわたしはあの人としかここでは呼びようのない人に生かされる。

既に退屈だと決定してしまった思い出を忘れはしないし抱えて生きてはいくけれど、もうわたしには関係がないと断言できる。大好きだった。しょうもない、原石ですらないけど本当に魅力的だった。明けましておめでとうございます。ここに書いても誰にも届かないけどね。

追記20200704

冒頭に書いてあることは誇張なし/全て実際の出来事なんだけど、今読むと「本当ですか?」って自分で思う。謎な人生。

追記20220121

あの人と初めての群馬旅行に行った時「一緒に旅行してるとお店の人がお前のことをすごく丁寧に大切に扱ってくれてるのがよくわかるよ」と言っていた。