アタリしか引かない。

※全てフィクションです。エロと精神とらぶ。

映画のネタバレするよ。Me Befroe You

観た。「世界一キライなあなたに」映画。

これはラブストーリーの棚にあるけれどもラブストーリーではない。これはあしながおじさん(31歳)物語です。あしながおじさんは最後に死ぬけれども。

この話は何が表示されてるか、それはウィルという資産家子息で美貌の身障者のくせに嫌味で女々しく頑固者な男。そして、クラークという未来があるはずなのに家庭の事情から田舎町でくすぶっている明るさだけが取り柄の女。

クラークの朗らかさと滑稽さがウィルの美貌と性悪を引き立てている、対比の構造。

じつはこの作品は尊厳死がテーマではない。いやテーマの一つなんだろうけれども、意外とそこまで大きな割合を占めていない。この映画を観た人が尊厳死についてどう思うかとかはどうでもいい、考えるべきはそこじゃない。だって始末はついていて、ウィルは尊厳死を選んだというただそれだけ。

忘れちゃいけないのは、ほぼ全身麻痺するほどの大事故に見舞われたのにウィルはずっと嫌な奴で皮肉屋なままなところ。事故前は才能に溢れて活発だったことは間違い無いだろうけれど、けっこう嫌な奴であったことも間違いない。結局自分のダメなところをこいつは乗り越えられなかったということ、むしろ強化させた可能性すらある。

確かにそのウィルの頑なで嫌味なところをクラークが持ち前の根性と明るさでときほぐしていくのも見どころの一つとしてある。ウィルはウィルで自分とのコミュニケーションを諦めない優しいクラーク(金がないから働かなきゃならないという事情もあるが)に友情が芽生えて、それが愛情になるのは自然な成り行きだしきちんと素敵には見えるんだけど、そこですごくいい男になるわけではないんだよね。ただ自然とお互いをそのままの自分で好きになるだけ。嫌な男が事故以前なら目にも止めなかった女と恋に落ちて少しばかりの漢気に目覚める、だけ、その結果のあしながおじさんエンドで、クラークは未来のない街から抜け出す。

作中、ウィルがそんなにいい男じゃないことが表示され続けている。美貌と身体麻痺に騙されるな。(でも流石にウィルの無念には泣けてきた、すごく好きな女に自分から触れられないってアルファ的な男には辛すぎるだろう、事実ウィルはクラークに果敢に生きろ、落ち着くなと言っているから、ウィルは元々こういう攻めて仕掛けていく人なんだろうね、そういう意味では有能で、実家の資産のバックアップもあって何不自由なかったのだろう)

ウィルの嫌な奴ぶりがクロースアップされているからわからないけど、クラークもクラークでいい子ではあるけれどもそんなにいい女ではない。スマートではないのは育ちを見れば当然として、貧乏人特有のど厚かましさがあるし、ウィルに恥をかかせても気にしない、気が利かない。人の金で旅行してはしゃぎ倒すし。わかりやすく完璧でないからこそ観客には好かれる、事実この二人が最高に好きという人は多いと思う。

この作品はヒーローにしては頼りない男とヒロインにしては不甲斐ない女のちょっと遅れてきたボーイミーツガールのお話であり、頼りないヒーローが、完璧でないけれども愛すべき唯一の女のために漢気を見せてから死ぬというそういうお話。

タイトル通り、「あなたに出会う前の私」のままで二人の本質は全然変わらない。

きっとこの映画に怒っている人は、尊厳死とか身体障害がスパイス的な役割を担わされている気がしてモヤモヤしているのだと思う。でもテーマはそれじゃないので、それについて議論するに足る作品ではない。ジョニーは戦場へ行ったでも観てどん底から出直してください。

この映画は、事故を経てもなお超絶嫌なやつだったウィルがクラークと出会って、まあちょっとはマシな漢気を見せることができた、痛快で男らしい男にはなれなかったけれとも、自身の最期に必死で彩りと恋をくれた彼女へのせめてもの敬意と愛情を見せて、なんとか男として死んでいった、というお話でした。

追記。一見嫌な男って懐に入ってみると可愛いところあるよね。

追記。20231218

これさ、やっぱ恋愛映画じゃないよね。なんというか、ウィルは自身を駆り立てて恋愛しているように視えるんだよなぁ。クラークは魅力的だけど、元々のウィルの好みではないし。